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Green × Global Startup 2024 KICKOFF 開催レポート

Green × Global Startup 2024 KICKOFF
Green × Global Startup 2024 KICKOFF
2024年6月19日(水)にTokyo Innovation Baseにて開催された「Green × Global Startup 2024 KICKOFF」のイベントレポートです。
イベント開催案内は 《こちら》 のページをご覧ください。

1. 概要

スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアムは、2024年6月19日にTokyo Innovation Baseにて「Green×Global Startup 2024 KICKOFF」を開催しました。当日は「日本初クライメートテックスタートアップ急成長のカギ」と「日本初スイングバイIPOでの上場の裏側を探る」の2つのセッションが設けられました。その後、それぞれのセッションで質疑応答が行われ、イベント終了後には交流会が開かれました。

Green x Global Startup 2024 KICKOFF会場内風景

2. イベント実施概要

① 𠮷村恵一 東京都スタートアップ 国際金融都市戦略室長からのご挨拶

開会にあたって、𠮷村恵一 東京都スタートアップ 国際金融都市戦略室長から、会場に集まった参加者の皆さまに向けて開会のご挨拶がありました。昨年策定したスタートアップ戦略を契機として、エコシステムを大きくしていくために1年間大きく前進したとお話しされました。具体的には、Tokyo Innovation Baseがオープンして以来130以上のイベントが開催され本日6月19日時点で1万4000人以上の方に利用したいただいたこと、2024年5月15日、16日に東京ビッグサイトで行われたSusHi Tech Tokyoのグローバルカンファレンスでは、参加者4万人以上を動員し、国内外から430以上のスタートアップが出展し、3,000件以上の商談が行われたことをお話されました。

𠮷村恵一 東京都スタートアップ 国際金融都市戦略室 ご挨拶
ディープエコシステム支援の説明

② 東京コンソーシアム事務局の森本陽介より東京コンソーシアムの概要についてご案内しました。

3. セッション① 日本初クライメートテックスタートアップ急成長のカギ

【登壇社】
東京大学 FoundX ディレクター 馬田隆明氏
Tensor Energy株式会社 代表取締役 堀ナナ氏
株式会社ファーメンステーション 代表取締役 酒井里奈氏

【モデレーター】
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 執行補佐 宮澤嘉章

パネリストして東京大学 FoundX ディレクターの馬田隆明氏、Tensor Energy株式会社 代表取締役 堀ナナ氏、株式会社ファーメンステーション 代表取締役 酒井里奈氏のお三方とモデレーターを務める宮澤との対談が行われました。はじめにお三方からの自己紹介をいただき、続いて3つの議題についてお話しいただきました。以下、抜粋・要約してご紹介します。

セッション① 日本初クライメートテックスタートアップ急成長のカギの対談風景

① クライメートテックスタートアップのグローバル展開・成長に向けた課題意識について

宮澤:皆様が考えるクライメートスタートアップグローバル展開・成長に関する課題は何ですか。

馬田氏(以下、敬称略):第一にクライメートテックを担うスタートアップの数が少ないということがあげられます。これは競合が少ないというメリットにもなり得る一方で、当該領域におけるノウハウが蓄積しにくく、成功するスタートアップが生まれにくいのです。グリーンやクライメートはグローバルな課題であるため、グローバルなスタートアップが生まれやすい環境は整っていますが、国内のマザーマーケットにおける需要が未だ不十分であるという課題があります。そのため日本で起業する意味は一体なんなのか、という問いが生まれてしまい、グローバルなスタートアップが日本から生まれることが難しくなってしまいます。国内需要をどのように作っていくのかという点がグローバル展開・成長において重要になってくると思います。

酒井氏(以下、敬称略):馬田さんが先に指摘したクライメートテックを担うスタートアップの数が少ないという課題はまさにその通りだと思います。国内に数が少ないと競合が切磋琢磨することもありません。以前ご縁がありグローバルなクライメートテックのミドルレーターステージのスタートアップを支援する海外のプログラムに参加したのですが、その際気づいたことは、欧米ではこの分野の競合がうじゃうじゃいるおり、それを知らなければ日本の当該領域に関わるスタートアップは負けてしまうということです。また、欧米ではこの領域に非常に大きな資金が流れている一方で国内では資金調達の機会や需要も少なく、海外に出ざるを得ないというのが現状です。さらに、参考となる事例が少なく、国内のネットワークも少ないため情報が乏しく運営が手探りとなっている状況です。

堀氏(以下、敬称略):弊社が海外にでるにあたって悔しいと感じることは、電力システムがヨーロッパに先行されてしまっており、今からその領域でヨーロッパを狙うことが難しいということです。クライメートテックにおいても、ルールメイクの段階から大きく関わるヨーロッパ的なプレイが日本には必要だと感じます。

馬田:また、最近では私が支援しているスタートアップがオーストラリアの技術動向を視察した際に、実は日本の技術の方が圧倒的に強いということを実感したそうです。日本のスタートアップは海外に出ていないため、日本の強みに気づけていない。もう一つ、海外に出ないがゆえに、日本にはモノづくりのサプライヤーが強みを持っているという事実に気づいていないということも課題と言えるでしょう。

株式会社ファーメンステーション 代表取締役 酒井里奈氏 プレゼン

クライメートスタートアップへ望まれる支援策

酒井:まず一つに、SusHi Tech Tokyoはぜひ継続していただきたいと考えています。SusHi Tech Tokyoは規模が大きく、国内のみならず海外のエコシステムとの関わりがありました。またSusHi Tech Tokyoがスタートアップにおけるグローバルな場所になりたいというメッセージを掲げていますが、これは今後継続していかないと意味がありません。いつか知名度が上がり、国内外の多くのスタートアップが目指すイベントとなればいいなと思います。
また、海外進出のサポートは都や国でさまざまな制度がありますが、SaaSやテック系をメインとしています。一方でクライメートテックに関わる制度はいまだ少ない状況となっていると感じるため、実態に応じた制度ができることを期待しています。

:まず、ルールメイクや制度作りという観点で、スタートアップがポリシーメーカーや大企業と一緒になってやっていけたらいいと思います。もうひとつは、今まで日本のスタートアップは大企業が手を付けない周辺領域に関わってきた背景がありますが、海外の事例を見ると主要な領域を担うスタートアップが大きく成長しているという印象があります。ここに対して資本のみの支援ではなく、実績作りの支援をしていただけると特にアーリーステージでは助かります。また、現地パートナーとのネットワークづくりは非常にありがたいご支援だと感じます。

宮澤:東京コンソーシアムで役に立った支援はありましたか?

:グリーンスタートアップ支援では多岐にわたるサポートをしていただきました。特に創業期はあらゆる業務を同時にこなす必要があったため、非常に助かったと記憶しています。また、大企業に対するアプローチは非常にチャレンジでしたが、その点も大きく支援していただいてたくさんのリードを獲得できたと思います。

馬田:私はお二人と違い、完全に支援側としてこの領域に関わっています。そこで感じることは、支援のやり方という部分が変わってきているということです。これまでITなどを支援してきたときとは違い、クライメートにおいては初期段階における仮説検証のコストがかかるためある程度狙いを定める必要があります。このように支援側は、ユニコーンとなるスタートアップを育てていくためには支援のやり方を考えていく必要があります。そこで具体的な支援は2点あります。1点目は、市場を起点とした支援方法です。必ずしも最新技術が必要というわけではないのがクライメートテックの面白いところで、古い技術だとしても新しい市場に適用していけるため、現在の市場を考えて支援をしていく必要があります。2点目は、需要を作り出す支援です。買い手側がイノベーションを起こそうという意識がないと、イノベーティブな製品は売れません。そのため、新しい需要を作ることが大企業や政府に求められているでしょう。イノベーティブな調達をどのように日本国内で生んでいくのかという支援が需要を生み出すと考えます。

宮澤:お二方は技術を起点としたビジネスを展開しているが、馬田氏がおっしゃった市場を起点とした支援についてどう思いますか?

:実績をつくるという点での支援は非常にありがたいです。市場自体がより大きくなっていくとスタートアップだけでなく日本全体にとっていい効果があるのではないでしょうか。

馬田:先ほど堀さんがおっしゃっていたルールメイキングは非常に大事だと思います。ある程度規制があることによって需要は生まれます。それにより産業が育っていくのでその部分は政府が支援をしていくべきでしょう。

:社会課題があったときにそれを解決することで経済的メリットが生まれる仕組みが大事だと考えます。そこでインセンティブをあげる政策が重要ですね。

クライメートテックスタートアップのグローバル展開・成長に向けた課題意識の対談風景

ネットゼロ実現に向けたクライメートスタートアップの役割

酒井:クライメートテック領域に関わるスタートアップや事業全般は必要なものです。日本は資源が限られたなかで循環型社会を作ることが必須であり大きなビジネスチャンスになります。共感していただける皆さんと今後、国境を越えて実現していきたいと考えています。

:スタートアップというのは、ある種時限爆弾を抱えながら走るようなものです。逆に我々はリスクを取ることができる人たちなので、私たちをうまく活用していただいて、みなさんもちょっとしたリスクを取っていただけると、この領域がさらに大きく広がっていくと考えます。

馬田:クライメート領域に限らず、スタートアップは理想や希望を見せていくことが社会から求められている役割だと考えています。さらに、ポジティブであることが大切です。私たちは気候変動や災害に対して怯えるだけではなく解決することができる、そのための手段もあるというポジティブな姿勢を見せていくことも役割の一つだと思いますし、スタートアップのこういった姿勢が大企業も動かしていけるのではないだろうかと思います。また、このクライメートの領域はこの10年間スタートアップ・エコシステムを育ててきた総決算のフィールドであると考えます。グローバルでなければならないし、政府や大企業の役目も大きな領域です。大学においても一つの大学だけでなく、さまざまな大学の技術を集めてきて1つの事業を仕立てることが必要となっています。そのため、クライメート領域はスタートアップ・エコシステムにとって大きな期待となる役割を担っていると思います。今後もさまざまな方々と協働して取り組んでいきたいです。

Q&Aセッション

Q:「国内のマーケットが盛り上がっていない中でどのような資金調達戦略を立てているだろうか」

A. 酒井:「比較的最近終えたところ。インパクト領域、気候変動領域、グローバル展開に投資しようとしている国内投資家の方々をキープしようと考えている。」

A. 堀:「日本から出るべきだとシリコンバレーの方からの声をいただくこともあるが、自分たちはもう少し国内で粘っていきたいと考えている。」

4. セッション② 日本初スイングバイIPOでの上場の裏側を探る

【登壇社
株式会社WiL ジェネラルパートナー兼共同創業者 松本真尚氏
早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏
株式会社ソラコム 取締役 最高財務責任者 CFO 五十嵐知子氏

【モデレーター】
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 執行補佐 金澤祐子

スペシャルゲストとして株式会社WiL ジェネラルパートナー兼共同創業者 松本真尚氏、早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏、株式会社ソラコム 取締役 最高財務責任者 CFO 五十嵐知子氏のお三方とモデレーターを勤める金澤との対談が行われました。はじめにお三方からの自己紹介をいただき、対談していただきました。以下、抜粋・要約してご紹介します。

セッション② 日本初スイングバイIPOでの上場の裏側を探るの対談風景

金澤:スイングバイについてまず説明させていただきます。スイングバイとは宇宙用語で宇宙探査機が惑星の重力を活用して加速することを指します。惑星は大企業を表し、スタートアップが1度大手企業によるM&Aを受け入れたうえで、そのアセットを活用していくことをスイングバイと例えています。主なメリットとしては、大企業の資金、リソース、信用力をフル活用することで、デメリットは一度M&Aをされるため、独立性が保たれないこと、ガバナンスが複雑化すること、文化的なコンフリクトが発生するというリスクがあることです。

① ソラコム、KDDIとの協業の歩み

五十嵐氏(以下、敬称略):ソラコムは2014年の11月に創業しました。拠点は東京、アメリカ、ロンドンにあり、社員数は150名です。元々グローバルを目指していることもあり、メンバーの1/3は海外拠点に在籍しています。事業としては皆様のDXを支援するグローバルIoTのプラットフォームサービスを提供しているBtoBのサービスです。KDDIグループに参画したユニコーン企業でしたが、大手企業の元で大きく育っていきたいという意図がありました。大手のグループに入ったのち、新たなチャレンジとしてさらにグローバルに飛躍するためにIPOも選択肢として考え、スイングバイIPOというコンセプトを発表することとなりました。実績として、ソラコムがKDDIに入った当初はIoTの回線数は8万回線でしたが、2020年時点では200万回線、足元は600万回線を突破しました。
スイングバイIPOは、三段ロケットになっています。1段ロケットは資本政策を変えることで、2段ロケットは6社株主参画です。最終的に、2024年3月に上場を果たしました。

金澤:スイングバイIPOとは三段ロケットとのことだが、このコンセプトはどういう経緯で生まれてきたのですか?

五十嵐:KDDIと別の資本政策ということになると、KDDIとの仲が悪いと思われてしまうかもしれないと考えました。そうではなく、さらなる飛躍を目指すためのポジティブなコンセプトを生み出す必要があったのです。また、メンバーはみな宇宙が好きで、さらに大企業のアセットを利用してさらに1段上がっていきたいという思いからこのような名称になりました。

金澤:スイングバイIPOを進める中で難しかったことは何でしたか?またどのようにそれを乗り越えてきたのでしょうか?

五十嵐:大企業独特の結果は変わらずともプロセスを変更しなくてはならないという事情も踏まえつつ、丁寧にステップを踏むことで乗り越えてきたと思います。

松本氏(以下、敬称略):KDDIとソラコムが事業をグローバルで展開していくことを合意したことがスイングバイIPOを達成できた理由だと思います。

金澤:スイングバイIPOは大企業とスタートアップがWin-winとなるスキームだと言われていますが、これがいい選択肢になり得る条件は何だと考えますか?

入山氏(以下、敬称略):最大の条件は大企業の社長の特性です。肝が据わっていて戦略家であり、長期政権であることが重要です。社長が2,3年で変わってしまう会社がスイングバイIPOをするとうまくいきません。また、2点目にスタートアップ側の条件としてはグローバルであることです。国外に出ることでビジネスが伸びていきます。国内で小さい規模の事業をやっているスタートアップはスイングバイIPOを行うことは難しいのです。
3つ目の条件は真面目であることです。ソラコムはほぼ全員が理系で構成されてIPOまで行った珍しい会社です。非常にまじめで真摯でぶれない軸があることが重要だと考えます。

Q&Aセッション

Q:シードから投資されていたVCファンドとして、最終的にいい結果となりましたか?

A. 松本:トータルのファイナンシャルリターンを考えると、非常にいい結果だったと言えます。

Q:胆力のある人や志が高い人たちが集まったからこそ、日本初のスイングバイIPOでの上場を達成されたのだと思うのですが、そのような出会いはどのようにして生まれるものなのでしょうか?

A. 松本:ソラコムは創業時からメンバーの志がぶれていないのです。そのような組織にそのような人間が勝手に集まってくるのだろうと考えます。

A. 入山:あまり“出会う”ということを考える必要はないと思います。自分がそういう志や魅力があれば、志の高い人間と関わることになります。ソラコムの代表は留学仲間だったのですが、非常にいい人です。そんな人に勝手にいい人が集まってくるんです。

A. 五十嵐:応援してもらえるようなかたちに持っていくことだと思います。今回のスイングバイIPOも私たちにとっては重要なマイルストーンではありますが、それで終わりではなく次に行くためのステップでもあると考えています。これを応援してくれる支援者を増やしていくことが重要でしょう。

 × Global Startup 2024 KICKOFFの集合写真