スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアムは、2024年2月16日(金)、大学WGの一環で、ディープテックイベント「ロボティクス・スタートアップ最前線 ~テクノロジー×社会課題解決への挑戦」を開催しました。
業界の一線を走るロボティクス系スタートアップ4社である株式会社アイ・ロボティクス、エアロセンス株式会社、株式会社センシンロボティクス、SOINN株式会社と東京工業大学教授 辻本将晴氏をお招きし、ロボティクス系ロボティクス系スタートアップの課題と展望など現在地を確認し、未来への道筋を探りました。
東京コンソーシアム事務局 森本陽介(有限責任監査法人トーマツ)
東京コンソーシアムは、産学官金の交流を促進するプラットフォームを提供しています。内閣府や東京都などの公的機関と協力し、社会や都市の課題に対する取り組みを展開しています。面のエコシステムとディープ・エコシステムの二段階アプローチで、エコシステムの発展を図るとともに、スタートアップの成長支援も行っています。今回のイベントでは、市場のグローバル成長と需要の拡大が見込まれているロボティクス領域に注目し、ディープ・エコシステムに採択されておりますロボティクス系のスタートアップの方々をお招きしております。
東京工業大学 環境・社会理工学院 教授 研究・産学連携本部 副本部長 辻本将晴 氏
エコシステムの概念は、補完的な関係者(コンプリメンター)を含むことに重点を置いています。
この観点から、自社のローカルプロダクトが、他者にどう映っているかを理解することが重要です。消費者は単に製品を消費するだけでなく、その製品を支えるシステム全体を評価しています。つまり、良質な製品だけでなく、システム全体の問題の有無も顧客の評価に影響します。
また、エコシステムにはビジネスプレイヤーだけでなく、政府の政策担当者も重要な役割を果たしています。ここでのエコシステム構築の難しさは、異なる信念や文化を持つ多様な人々をまとめることにあります。エコシステムでは、現場の詳細な知識と全体像の把握の両方が重要です。
そもそも、日本のエコシステムレベルは世界の中で負け続けています。これは、技術的に劣っていないけれど、大学の研究が社会に大きなインパクトを与えていないところに起因します。
それにより、海外展開が今後の課題となってくると考えます。良い製品を作っていたとしても、海外のローカルエコシステムにうまく入り込めないと、成功は難しいでしょう。
業界の一線を走るロボティクス系スタートアップ4社と辻本先生にご参加いただき、社会課題、業界課題、将来の展望についてパネルディスカッションを行いました。
【登壇社】
株式会社アイ・ロボティクス 代表取締役CEO 安藤嘉康 氏
エアロセンス株式会社 取締役 嶋田悟 氏
株式会社センシンロボティクス 代表取締役社長CEO 北村卓也 氏
SOINN株式会社 代表取締役CEO 長谷川修 氏
東京工業大学 環境・社会理工学院 教授 辻本将晴 氏
【モデレーター】
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 スタートアップ事業部マネジャー 伊達貴徳 氏
安藤氏(以下、敬称略):老朽化問題や人手不足がありますが、機械化にすぐに移行することはできません。なぜなら安全基準の遵守や費用面がハードルとなっているからです。顧客の現在の課題を聞くだけでは、本質的な問題に気付かずに終わってしまうため、お客様と二人三脚で関わりながらヒアリングを行い、それに対して最適なソリューションを生み出す過程が大切です。
嶋田氏(以下、敬称略):導入することで現場の人の仕事の仕方を変える事になる。メリットが明確にあってもすぐに変更することは中々難しいと感じています。
北村氏(以下、敬称略):新しいテクノロジーの導入は、現場ではなかなか意思決定できないので、いかに上層部で理解してくれる人を見つけるかが最優先となります。
長谷川氏(以下、敬称略):提案には前向きであっても、導入までは進まないことも多いです。結果的に海外のテクノロジーを採用されることもあり、残念に思っています。
辻本氏(以下、敬称略):導入先の意思決定問題はどの業界でも起こります。どのように早くやってみようとなるかは、各社ごとにアプローチを変えなくてはいけません。
安藤:上から強制されているのではなく、やらないといけない状態となることが、世の中を変えると思います。
嶋田:日本のドローン規制はシンプルでわかりやすいと思います。日本が世界をリードしてもいいくらいだと思っています。
北村:リスクテイクできるかが問題。中国政府は、イノベーションに犠牲は必要だと色々な試験を後押ししています。日本も過去事例だけに寄らず、実装に積極的にトライしてほしいです。
長谷川:認知を広げることが重要と感じます。自社の技術は、2022年にUPGRADE with TOKYO で優勝したことで認知されたと思います。
辻本:政策がイノベーションのエンジンの一つにもなり得て、政策が及ぼす影響は新しい分野では大きいと感じています。
安藤:日本は、モノづくりはうまいがまだイノベーションを生み出す土壌がない。まず地盤を作ってから海外進出を狙うべきです。
嶋田:海外進出する時は様々な規制があるからモノづくりは大変です。海外のエコシステムに入り込むネットワークがあることが大事です。
北村:日本は課題先進国と言われていますが、これを武器にしなくてはならない。日本の方が進んでいる分野は沢山あります。エコシステムをうまく使ってチームで海外に売り込みに行くべきだと思います。
長谷川:現在、特許や商標取得など海外進出のための準備をしています。アメリカ企業から投資の声掛けがありましたが、本社を米国に移さないと投資できないと言われ、こうしたこともエコシステムに入り込むハードルになっている。今後どうしていくか考えているところです。
辻本:産業を育成し、海外のエコシステムに入り込む時には徹底した専門家が必要不可欠です。日本政府の担当のローテーションは良くないのではないでしょうか。いかに優秀であってもそのエコシステムに入り込めないということが国内外で起きていると思います。
参加した社会人のオーディエンスから、「スタートアップの最前線の方々が集まり、過去に直面した課題を共有してくれたことが非常に役に立った。これからスタートアップを始めたい人にとって有益な指針が得られた。このような経験を若い世代にも共有してほしい」との声が寄せられました。
東京コンソーシアムは今後も東京から世界に誇るスタートアップを輩出していく為に、全力で起業家を支援していきます。今後ともご支援の程どうぞよろしくお願いいたします。