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世界から見た東京のスタートアップ・エコシステム イベントレポート ~第一人者に聞く今後の東京エコシステムの可能性~

2022年12月13日(火)にCity Lab Tokyoにて開催された「世界から見た東京のスタートアップ・エコシステム ~第一人者に聞く今後の東京エコシステムの可能性~」のイベントレポートです。

1. 概要

東京コンソーシアムでは、2022年12月13日(火)に「世界から見た東京のスタートアップ・エコシステム~第一人者に聞く今後の東京エコシステムの可能性~」をテーマに、東京圏におけるスタートアップ・エコシステムの在り方を議論するイベントを開催いたしました。当日は8月の全体推進WG(指標検討)にて委員としてご参加いただいた有識者の方々をお招きし、パネルディスカッションを行いました。

2. イベント実施概要

(1) GSER分析結果を踏まえた東京のエコシステムの現状

Startup Genome社では、毎年世界の各都市のスタートアップエコシステムランキング(以下、GSER)を公表しております。2022年度の本ランキングでは、東京は世界の都市の中で第12位という結果になりました。
GSERは、世界の都市のエコシステムにおける6つの項目(パフォーマンス、資金調達、人材・経験、マーケットリーチ、コミュニティ・インフラ、知見)についての成熟度を評価しており、内訳を分析したところ、「資金調達」や「人材・経験」、「知見」といったリソース項目の評価は高い一方で、ネットワーク形成に関する「コミュニティ・インフラ」の項目で評価が低くなっております。東京コンソーシアムでは、東京がスタートアップ・エコシステムのグローバル拠点都市に確立することを目指し、起業家交流の場の提供や海外に向けた情報発信等に取組んで行くことが必要です。

(2) 藤本氏ご講演「世界の都市のスタートアップ・エコシステムの特徴」

スタートアップ・エコシステムとは、ある場所にいる人々や組織が新しいスタートアップ企業を生み出すシステムとして相互作用することによって形成されるものです。現在は世界の様々な都市で、拠点形成やプレーヤーの集結機会の提供、国や都市、大学等と連携したプラットフォームの構築が進められており、従来のシリコンバレー型を超えた新しい形のエコシステムの形成が進んでおります。

(3) パネルディスカッション「GSERランキング向上に向けた東京の取り組み」

藤本氏がモデレーターを務め、投資家の立場から田島氏、アカデミアの立場から島岡氏、スタートアップ支援の立場から小田嶋氏が、GSERランキング向上に向けた東京の取り組みについてディスカッションを行いました。

・ GSERランキングの必要性について

GSERランキングは、ランキングを向上させることそのものが目的ではなく、あくまで手段に過ぎないものであるという共通意見が挙げられました。そのうえで、GSERランキングは起業家の共通ビジョンとして活用できること、またスタートアップ・エコシステムの成熟度の観点から世界における東京の位置づけを理解する一つの指標として用いることができるのではないかという意見をいただきました。

・ 今後東京圏がスタートアップ・エコシステムの形成に向けて着手していくべきこと

今後東京圏がスタートアップ・エコシステムの形成に向けて何を着手していくべきか、ご意見をいただきました。

GSER分析結果からは、スタートアップの資金調達や大型エグジットの少なさが東京圏の課題として出てきております。海外からの資金調達の少なさや大企業とのマッチング機会が限定されていることによるM&Aの少なさが要因として挙げられます。海外からの資金調達の少なさについては、東京のエコシステムや日本のスタートアップの取り組みが海外に向けて発信されていないことが起因しております。海外投資家から日本のスタートアップをあまり認知されていないために、海外からの資金調達が困難になっております。そのため、日本のスタートアップは世界で戦うことを念頭に置き視座を高めていくことが必要となります。また情報発信という観点からは語学や環境面などにおけるデメリットの大きさから、海外スタートアップが東京圏に進出しにくいといった課題も上げられます。東京コンソーシアムとして、東京圏のエコシステムについてその魅力を英語で発信し、海外スタートアップを積極的に誘致する必要となります。大企業との連携に関しては、最近では企業の戦略方針としてコーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)を設立しスタートアップを買収する動きがあります。しかし、多くの企業でCVCそのものが目的となっているケースが見受けられるため、CVCそのものを目的とするのではなく、企業の目指すべき方向性と現状のギャップを埋める手段として、経営層が中心となりスタートアップとの連携に積極的に取り組んでいく必要があります。

また、スタートアップ・エコシステムとしては優れたスタートアップの母数を増やしていくことも不可欠です。優れた起業家を増やしていくためには、大学だけでなく大企業やスタートアップを巻き込んだ議論が必要となっています。大学では、スタートアップ人材の育成を目的としてアントレプレナーシップ教育が広がっており、民間企業と連携してアントレプレナーシップ教育の授業を共同開発・共同実施している他、海外起業家へのピッチ機会を提供する等学生と起業家の接点の創出に力を入れています。これらの機会は、周りの学生や教授にポジティブな影響を与え意識を変化させることができ、スタートアップの裾野の広がりに繋がることが期待されます。また、起業家育成にあたっては大企業側の体制の変化も求められています。企業が社員を一から育てるという社員育成体制や、失敗に消極的な経営層の姿勢を改める必要があり、大企業の体制や社風が変化していくことが期待されています。

イベント概要

  • 日時
    12月13日(火)16:00~18:00
  • 場所
    City Lab Tokyo
  • 登壇者
    Plug and Play Japan株式会社 執行役員 CMO
    一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事 藤本あゆみ氏
    合同会社EDGEof INNOVATION CEO 小田嶋 Alex太輔氏
    早稲田大学 教授 島岡未来子氏
    株式会社ジェネシア・ベンチャーズ CEO 田島 聡一氏