2023年1月17日に、「Greater Tokyo Startup & Government Pitch ~広域連携自治体の取組とスタートアップの可能性を探る」がオンラインで開催され、広域連携自治体と自治体から推薦された7スタートアップ企業が登壇しました。本イベントは、東京圏のスタートアップ・エコシステム形成に向けて広域連携自治体の取り組みについて情報共有とスタートアップとのマッチング促進を目的とし実施しています。本イベントでは、初めに広域連携自治体が各字自体の現状とスタートアップ支援施策を紹介し、その後スタートアップがピッチを行いました。
東京コンソーシアムでは、広域連携自治体と連携しスタートアップを支援する施策を実施しています。第一部では、広域連携自治体の中から7つの自治体(渋谷区、つくば市、茨城県、千葉市、川崎市、横浜市、東京都、※登壇順)が登壇し、各自治体におけるスタートアップ支援の取り組みを紹介しました。
渋谷区
渋谷区にはスタートアップ企業やベンチャーキャピタル、アクセラレーションといった組織やシェアオフィス等の設備が多数存在し、日本最大のエコシステムが形成されています。今後国際競争力のあるスタートアップを創出していくために、渋谷区独自のコンソーシアムを形成する等の「環境整備」や、”Startup Welcome Service”と称した海外起業家の誘致を促進するサービスの提供等の「国際化」、渋谷区民が実証実験に参加する「実証実験事業」を進めています。
つくば市
つくば市には研究機関や研究者、研究機関発のベンチャー企業が多数集結しているため、今後更にスタートアップ支援を拡大する必要があります。
現在の具体的な取り組みとして、スタートアップ創業前後を支援する「「つくばスタートアップパーク」の運営や、大学や研究機関、自治体、民間支援組織を繋ぐエコシステムの形成、海外機関との連携、スタートアップとの協業を進めています。
茨城県
茨城県にはつくば市を中心として国立研究機関発や大学発のディープテック企業が多数存在しています。県では「ベンチャー企業が投資家や支援機関と接続する機会を増やすこと」と「県外の投資家や支援機関のネットワークを拡大し、県内のベンチャーへ還流すること」の2つを課題として、ベンチャー企業の創出や育成、拠点づくりに力を入れて取り組んでいます。
千葉市
千葉市では自治体や民間組織、大学・研究機関等とスタートアップを繋ぐ千葉市独自のスタートアップ・エコシステムを形成しており、更なる組織の拡大を目指して取り組んでいます。また、具体的な支援施策として、スタートアップ育成を目的とした「千葉市アクセラレーションプログラム」や、市の中小企業の製品やサービスの認知・拡大を促進する「トライアル発注認定事業」を提供しています。
川崎市
川崎市では民間や大学・研究機関等と連携したスタートアップ支援拠点が点在しています。例えば、「殿町国際戦略拠点キングスカイフロント」では、ライフサイエンス関連を中心とした70機関が進出しており、羽田地区との連携やインキュベーション機能の強化が進んでいます。他にも、専門家の支援やマッチングサポートを提供する「新川崎・創造のもり」や政府機関と連携した公的な起業家支援拠点である「Kawasaki-NEDO Innovation Center」等といったスタートアップ支援拠点があります。
横浜市
横浜市ではみなとみらい21地区と関内地区を中心に、多様なイノベーション人材の交流地区が形成されています。具体的な取り組みとして、スタートアップ成長支援拠点の「YOKO BOX」の設置や、スタートアップの成長ステージに応じた支援プログラムの提供を行っています。2022年~2025年の中期計画では「スタートアップの創出・イノベーションの推進」を重点政策に設定しており、今後さらなるスタートアップ支援の拡大が見込まれます。
東京都
2022年11月にスタートアップ戦略”Global Innovation with STARTUPS”を発表し、現状や今後の戦略について提示しています。
具体的には、国内外からスタートアップに係る団体が集結する拠点”Tokyo Innovation Base”の構築や、海外ベンチャーキャピタルやアクセラレーターの誘致、学生へのアントレプレナーシップ教育、公共調達の拡大等、世界を視野に入れたスタートアップ戦略を展開しています。
第二部では、広域連携自治体が推薦したスタートアップが登壇し、各企業の事業や取り組みを紹介しました。質疑応答では各社のビジネスモデルや事業展開に関する様々なご質問をいただきました。
株式会社Scurid(渋谷区推薦)
IoTデータに高い信頼性と価値を付与するソフトウェア企業です。複雑なID管理、データ漏洩、所有権の喪失といったデジタル課題を解決するために、デジタルアイデンティティやデジタルガバナンスソリューションを提供し、IoTデバイスへのデジタルIDの導入を簡素化し、デバイス自体が所有し、制御するプラットフォームを構築しています。第一部で紹介されていた渋谷区の”Startup Welcome Service”を利用し、ビザ取得等の支援を活用している企業の1つです。
株式会社フォトンラボ(和光市推薦)
インフラ用計測機器の製造販売および計測サービスの提供する計測機器ベンチャーです。笹子トンネルの事故をきっかけに内閣府主管の元で理化学研究所チームにより研究開発が進められたインフラ計測に関するディープテックを製品化しています。現在は道路トンネルを中心に社会実装を行っており、鉄道トンネルやコンクリート構造物等への拡大を進めています。
株式会社エマルションフローテクノロジーズ(茨城県推薦)
新規溶媒抽出技術である「エマルションフロー」を活用したレアメタルリサイクル抽出装置の開発、製造、技術普及を実施しているディープテック企業です。エマルションフロー技術を活用することでレアメタルの水平リサイクルが可能になり、レアメタルのサプライチェーン強化に繋がります。今後は他企業と協業しながらグローバルへ展開する予定です。
株式会社Bloom Act(つくば市推薦)
オンライン商談システムや資料動画化サービス等のオンラインサービスを展開するコンピューター・ソフトウェア企業です。オンライン商談サービスは、窓口のオンライン化ツールで、予約~商談~契約~記録~分析をワンストップで実現でき、銀行や旅行代理店等様々な企業で導入が進んでいます。資料動画化サービスは、パワーポイント資料をアップロードするだけで撮影や録音を行うことなく動画を作るサービスで、企業の労働生産性向上に役立っています。
Social Healthcare Design株式会社(横浜市推薦)
従業員のWell-beingを見える化させるサービスを構築・展開するコンピューター・ソフトウェア企業です。個人のWell-beingをサポートするアプリケーション”Happiness Book”や法人に向けた従業員支援ツール”Happiness Book Premium”の提供や、企業におけるヒューマンスキル育成プログラムの提供を行っています。今後は個別最適化した意思決定支援の自動化等を進め、更にサービスを拡大していく予定です。
株式会社カーム・ラーナ(千葉市推薦)
人工股関節に係る製品の開発・提供を行う医療・ヘルスケア企業です。日本人の体格にあった人工関節が少ないことや従来の手術方法は難易度が高い等といった課題を解決するため、千葉大学等と連携し、人工関節分野での研究開発を進めています。現在は千葉県内で普及を進めていますが、今後は首都圏エリア、全国、更には海外へと徐々に拡大していくことを考えています。
株式会社ナレッジパレット(川崎市推薦)
創薬及び再生医療高品質化の研究・開発を行う医療・ヘルスケア企業です。細胞ビックデータを速く・正確に取得するシングルセル・トランスクリプトーム解析技術を用いて細胞を診断・制御し、データ駆動でハイスループットに新薬を開発しています。製薬企業や病院との共同研究で収益を上げながら遺伝子発現データベースを蓄積しつつ、蓄積したデータベースを基に新規化合物や細胞医薬品を開発するというハイブリッド型ビジネスを展開しています。