スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアムは、2023年3月22日(水)に「イノベーションとダイバーシティ」と題してダイバーシティPTを渋谷ソラスタコンファレンスにて開催いたしました。当日はパナリット株式会社小川高子氏、株式会社ファミワン石川勇介氏にご登壇いただき、イノベーションとダイバーシティに関する動向や取組ついてパネルディスカッションを行いました。
(1)パネルディスカッション:イノベーションとダイバーシティ*¹ 東京圏スタートアップ・エコシステムからみた可能性
登壇各社の取組紹介を行ったうえで、各社のダイバーシティに向けた取り組みを通じた変化についてお伺いしました。
次に各社の取り組みを通じたダイバーシティの変化についてお話しいただきました。パナリット株式会社では、数年前は多くの日本企業が人事データを重要視していませんでしたが、今は人的資本の開示が義務化されることや根拠ある意思決定を行いたいという時代の流れと共に、人事データが活用されるようになってきたといいます。人事データを分析・活用することで、従業員の個々の能力が最大限発揮できる機会を提供することができ、その結果、多様な人材を活かした様々なイノベーションを生み出すダイバーシティ経営が行われるようになっています。一方で、株式会社ファミワンでは、数年前は不妊治療や妊活についての認知度は低かったのですが、ダイバーシティ、特に女性活躍推進や健康経営の文脈等で注目されるようになってきたと実感しているといいます。しかし他方で、社会全体でダイバーシティの重要性について関心が持たれ個人の意識が大きく変化するまでには至っていないため、引き続き取組を進めていきたいと今後の展望を語っていただきました。
*¹:「多様性」を意味し、具体的には、性別・年齢・国籍・人種・宗教・性的思考・障害の有無等の多様性の事を指す。また、働き方やキャリア、経験、認知の仕方、考え方といった、一見外からはわからない深層的な多様性も含まれる。
(2)ディスカッションセッション
パネルディスカッションを踏まえて、ご登壇いただいた2名と参加者の皆様でディスカッションを行いました。
まず、各企業が多様性を構築するにあたり何から着手するべきか話題が上がりました。企業が着手すべき内容は、各企業が置かれているフェーズによって、多様性を構築するために求められる要素は異なり一概には言えないものの、まずはジェンダーや国籍、経験値といった目に見える要素から取り組み始めるのも良いというご意見が挙がりました。また、多様性とは「自社が今まで気がつかなかったことを知らせてくれる」という意味だと捉えることができ、自社の社風にどのような要素を加えていくかという観点から考えるのも一案だというご意見もいただきました。
次に、今後、多様性が進んだ際の日本企業の姿について意見交換を行いました。日本企業が画一化した組織から多様性のある組織へ変化すると、従業員がより自由に働きやすくなるというご意見や、今までに無い視点から新しいプロダクトが生まれることが期待できるといったポジティブなご意見が挙がりました。
最後に、多様性の構築を進めるうえでの具体的な中身の部分について意見交換を行いました。特に、立地、年齢の多様性、外部専門家との連携の3要素が話題として取り上げられました。
まず本社機能の立地については、本社の場所によって多様性が構築されるのではなく、むしろ企業風土や文化によって多様性が構築されるというご意見がありました。実際、パナリット株式会社は本社を東京に移しましたが、従業員の年齢や国籍は多様でありダイバーシティな環境を築けていると紹介いただきました。
次に、年齢の多様性については、多様性を求める目的によって打ち出す施策が異なるため、まずは従業員の年齢の幅を広げる目的を考えるのが良いという意見が挙がりました。実際に、株式会社ファミワンには様々な専門領域の人材が集まっており、それぞれ多様な価値観持っているため、定期的に常識や価値観を擦り合わせる機会を設けることで多様性を保つ工夫をしています。また、一般的には人事のスペシャリストがいないことが多いシード・アーリー期の段階から組織戦略を立てられるCHROを雇うことで多様性や事業拡大を進めていったケースもあるというご意見もいただきました。
最後に、外部専門家の連携については、イベントへの参加や直接連絡をとること等を通して地道に外部専門家にアプローチしていき、連携をとることが大事だというご意見が挙がりました。