
■概要
2026年7月16日(木)、渋沢MIXにて「東京圏自治体連携WG」を開催いたしました。
本WGでは「公共調達」をテーマに、今後の公共調達拡大に向けて、登壇者から知見の共有と自治体間での意見交換を実施しました。
- 投資家視点・スタートアップ視点からの「公共調達の意義」についての共有
- 自治体の「先進的な公共調達事例の紹介」
- 「公共調達推進における課題と解決策」及び「行政ニーズの具体化方法」に関する自治体間での意見交換
■登壇者
VC
ファーストライト・キャピタル株式会社 真島 里帆氏
「人口減少社会の新産業創出」を投資テーマに掲げ、 アーリーフェーズの産業AI / DX、経営AI / DX、フィジカルAI、ライフデザイン、地域インフラ、危機管理領域のスタートアップに投資するベンチャーキャピタル。モノグサ株式会社(横浜市に導入実績あり)、株式会社モノクローム(横須賀市に導入実績あり)をはじめとした、投資先スタートアップの自治体展開支援実績を有する。
スタートアップ
株式会社MamaWell 関 まりか氏
ヘルスデータと専属助産師の「伴走型相談・個別最適ケア」を掛け合わせた妊婦向け健康管理サービスを提供。2022年に創業し、つくば市で実証後、経産省・厚労省事業や東京都、渋谷区の実証事業に採択。その後、品川区の「オンラインMy助産師」事業に正式導入された。
自治体
大田区産業経済部 伊藤 直樹氏
茨城県産業戦略部 澤山 周平氏
広島県東京事務所 重村 育伸氏


■トークテーマ
1)公共調達の意義(投資家視点)
投資家の視点から、公共調達実績の価値について真島氏より共有いただきました。自治体の導入実績は他自治体や民間へのアプローチにおける信用となり、売上の柱やプロダクトの有用性の証明となることが評価点として挙げられました。また、資金調達時の説明材料としても機能し、次ラウンドの資金調達を加速させる効果についても報告されました。一方、懸念点として、導入までのプロセス期間が長く、事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があることが挙げられ、VC側としては保守的な事業計画として見立てる場合が多いことにも言及されました。
2)公共調達の意義(スタートアップ視点)
スタートアップ視点から、公共調達がもたらす価値について、関氏より共有いただきました。MamaWellの事例から、実証事業の成果として「資金調達への直結」「複数自治体の導入実績による他自治体へのスムーズな横展開」「助産師会賛助会員への認定」の3点が報告されました。また、スタートアップ側から自治体へ期待する支援として、「スタートアップ支援部門だけでなく、原課担当者とも早期に繋ぎ、連携・対話すること」「有償移行時の予算確保の際、財政部門等から問われやすいポイントを事前に共有すること」が言及されました。
3)先進的な公共調達事例の紹介と自治体間での意見交換

大田区、茨城県、広島県からは、公共調達における制度設計と運用の両面における工夫が報告されました。
大田区からは、「2年間の実証実験を通じた効果検証」を経て、公共調達の契約方式の一種である政策目的随意契約(用語解説)へ繋ぐプロセス制度の設計により、庁内関係者の合意形成を円滑化させた事例が報告されました。優秀な企業を区内へ誘引し、新技術の区内導入を促進するプログラムを実施するなど、戦略的な取組により庁内調整時に役立ったことも共有されました。
茨城県からは既存の中小企業向けトライアル制度をベースにベンチャー企業に特化した制度を創設し、これまで12社13製品を認定・全件調達した成果が報告されました。またつくば研究支援センターとの連携により、効率的にスタートアップの情報を入手している旨も共有されました。
広島県からは政策目的随意契約(用語解説)の課題として、首長交代によるスタートアップ支援の方向性の見直しや、本制度の庁内への周知不足が挙げられました。「トップを巻き込んだ全庁的推進」と「庁内会議等において、制度や認定商品を継続的にPRすること」が本制度の活性化に重要であることが提示されました。
公共調達事例紹介後、現地及びオンライン参加者はグループに分かれ、①公共調達を推進するための障壁とその解決策の模索、➁行政ニーズの具体化方法についてディスカッションし、全体へ向けて共有しました。
参考)ファーストカスタマー・アライアンス(FCA)による全国連携
東京都より、全国の自治体がスタートアップの情報(政策目的随意契約の認定情報)を相互活用する枠組みとしてファーストカスタマー・アライアンス(FCA)の紹介がありました。参画メリットとして、「他自治体認定製品の随意契約による調達」「認定企業の他自治体へのPR」「事務局による手続きサポートやイベントでの知見共有」などが挙げられました。この枠組みにより、スタートアップの製品・サービスの公共調達が全国規模で加速するものと期待されます。
(参考HP)東京都ファーストカスタマー・アライアンス|Tokyo Firstcustomer Alliance
■アンケート
アンケート(回答者範囲:参加自治体)では、多くの回答者が公共調達を推進するうえで有益な情報を得る機会となり満足度が高かったと回答しました。有益と感じた理由として、自治体間での事例共有や意見交換を通じて自団体での活用イメージを具体化できたことや、事前ヒアリングにより論点が整理され、円滑な議論につながったことが挙げられました。自治体それぞれの視点から公共調達の価値を多角的に理解する場として機能したことが示唆されます。
■まとめ
本WGは、参加自治体が投資家視点、スタートアップ視点からの公共調達の意義を理解し、他自治体の事例共有により実践的な知見を獲得する機会となりました。加えて自治体間での意見交換により、自治体同士の横のつながりも強化されました。今後もWGを通じて、公共調達を含めたスタートアップ支援と自治体間連携の深化を進めて参ります。
■用語解説
【政策目的随意契約】
「政策目的随意契約」とは、地方自治体が公共調達を実施する際の契約方式の一つです。通常、公共調達は競争性と透明性を確保するため一般競争入札によって進められますが、地方自治法施行令第167条の2第1項第4号に基づき認定された企業の製品・サービスは、競争入札によらず随意契約(特定の業者との直接契約)することが可能になります。認定を取得した企業は、市場での実績が限定的であっても、自治体からの購入機会を得られる仕組みとなっており、スタートアップにとって重要なファーストカスタマー獲得の道筋となります。